「凍」(沢木耕太郎著)

凍
(2005/09/29)
沢木 耕太郎

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この本は、2002年、山野井泰史さん・妙子さん夫妻のヒマラヤ・ギャチュンカン(7、592m)からの奇跡の生還を描いています。

山野井泰史さんは、名だたる世界の高峰・岩壁を単独、無酸素で登攀する、いわゆる「ソロ」を得意とするクライマー、妙子さんも「世界でも最も才能のある女性クライマー」と評されるほどの方です。この本は、そんな「山・岩壁に登ること=全身で生きることを実感すること」の魅力に取り付かれた二人の壮絶な記録、です。(以下、ネタバレあり)


なんという山への情熱でしょう。奥多摩の古民家で、ただ山に登ることだけを考え、日々体を鍛え、費用を貯めるための倹約生活を送る二人。でも、一旦登り始めると全ての感覚と英知を働かせ渾身の力を振り絞ってただひたすら登る、上へ上へ・・・生きるか死ぬか・・・、厳しい自然と向き合って、生きることを求める姿が感動的です。英雄的な扱いや地位も名誉とも一切無縁、8,000mにも満たず、世界からも注目されることのないギャチュンカンをなぜ選んだのか、という経緯でもそのことがよくわかります。ただ山が好き、楽しいからつづける、と言ってのける純粋さ。。。

ギャチュンカンでは山野井さん一人登頂したものの、下山はさらなる困難が待ち受けます。雪崩で妙子さんが滑落。ロープ一本でつながれて、妙子さんの命は助かったものの、身動きができない状態に。山野井さんは、低酸素の影響で目が見えなくなり、凍傷で感覚がなくなった指で岩を探り、妙子さんを助け出します。その後も、寒さと疲労で死と直面した危機が続き、命が消えゆく感覚に何度か襲われながら、無事に生還。その描写の壮絶さに何度も慟哭してしまいました。

この本にはまた、山野井さんと交流のある世界のクライマー達の登攀に対するそれぞれの考え方、TVクルー動向の登攀について、登山時におけるごみ問題などなど・・・今どきのクライミング事情もわかる内容になっていて興味深く読みすすめることができます。

それにしても、私が一番驚いたのは妙子さんのこと。すでに手の指は第二関節から全てなく、足の指は2本のみ。そしてギャチュンカン登攀後、手の指全て失い、手のひらだけという状態に。(山野井さんは手の指5本、足5本を失ってしまう。。。)尋常ではない状態なのに、弱音を吐かず、他者への気遣いや優しさを忘れない・・・この本にはそんな妙子さんの強さ、冷静さ、優しさ、おおらかさがよくわかる逸話がたくさん描かれています。

・・・なにがあっても山をあきらめない二人。
遠く山を見つめる二人の姿が目に浮かびます。


お二人の様子は、昨年放送されたNHK「白夜の大岩壁に挑む~クライマー 山野井夫妻」で目にして以来、感動して気になって気になってしょうがない存在になりました。ここにも縁あって結ばれた夫婦二人、登攀中だけでなく、山を降りての助け合う奥多摩での暮らしががほほえましく描かれています。

白夜の大岩壁に挑む―クライマー山野井夫妻白夜の大岩壁に挑む―クライマー山野井夫妻
(2008/01)
NHK取材班

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昨年の夏、山野井さんが、奥多摩をジョギング中に熊に襲われ、顔・腕を噛まれて重症というニュースが飛び込んできました。命は助かった、とはいえ、とても心配していましたが、今年の1月の再放送時に元気で療養中のお姿を映像で拝見(お顔は少し腫れあがっていましたが)でき、ホッとしたのでした。きっと、どんなことがあっても熱い山への情熱が消えることはないんだろうな~

いつまでも楽しい山行きを・・・と願うばかりです。

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ぴょん | URL | 2009.02.24 09:30 | Edit
こんにちは。おすすめいただいたこの本、早速読んでみました。自分の中の想像では描ききれない壮絶さでびっくりしました。まず、崖の途中でビバーグしながらというのも、ただひたすら崖を登っていく時間の長さも想像を超えました。さらに両手の指をあそこまで失ってどうして…?と。本当にこのおふたりのしなやかな強さには静かに圧倒されるばかりです。どの場面ひとつとっても自分が直面したら…と思うと、心が凍りそうなほどでしたが、それなのに通う血のあたたかさも感じられました。よい本のご紹介、ありがとうございました。
lifetime | URL | 2009.02.25 20:37
ぴょんさん、コメントありがとうございます。

“しなやかな強さ”、表現ピッタリですね~。

たしかに、生死にかかわる危機に直面したとしたら・・・わがままいっぱいの自分を思うと想像するのが怖い。。。

ここに描かれているのは非日常の世界ですが、とても考えさせられることの多い一冊だったと思います。

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